この建物は作家・林芙美子が、昭和16年(1941)8月から昭和26年(1951)6月28日にその生涯を閉じるまで住んでいた家で、現在は「新宿区立林芙美子記念館」として公開されています。当時の家屋や雰囲気を味わいながら、芙美子がみた景色を想像してはいかがでしょうか。
※通常は建物の中に入ることはできませんが、庭から家の中の様子をみることができます。
茶の間から
日当たりも眺めもよく広縁(ひろえん)があるこの部屋は、一家団らんの場でした。
四季折々に移ろう美しい庭を、時には机を広縁に出して眺めていたこともありました。
庭から
現在は、玄関と客間前の庭付近にのみ面影が残っていますが、芙美子の存命中は、この庭一面に孟宗竹が繁っていました。
寒椿、ざくろ、カルミア、おおさかづきもみじなど、芙美子が愛した木々が今もこの庭に植えられています。
書斎から
納戸として作られたこの部屋は、しばらくすると、書斎として使われるようになりました。深い土庇(どびさし)、部屋の中から、半障子を通して廊下越しに北の小庭が見えるなど、納戸とは思えないような趣向が凝らされています。書斎前にも、芙美子が好きな竹が植えられています。風にそよぐ竹を眺めて、執筆の疲れを癒していたことでしょう。
林芙美子は、幼いころ、行商人の両親に連れられ、九州各地を転々とする生活を送りました。広島県尾道に落ち着き尾道高等女学校へ進学し、作家になりたいという夢を抱くようになりました。大正11年(1922)卒業と同時に、恋人を頼りに上京しますが、恋人との別離、関東大震災での被災、職も住居も定まらずという苦難の連続でした。しかし、文学への強い志を胸に立ち向かうことで、次第に文運が開けていきました。
落合に転居してきた昭和5年(1930)、自伝的小説「放浪記」がベストセラーとなり、文壇への本格デビューを果たします。「風琴と魚の町」「晩菊」「浮雲」など、市井の人々に寄り添った作品群は、多くの人の共感を獲得しました。
動画で観る林芙美子記念館
林芙美子記念館のウェブサイト上で、建物内部をご案内しています。通常の庭園からの見学ではわからない室内の数寄屋風(すきやふう)の細やかな意匠も紹介しています。芙美子が、住み手の暮らしと安らぎを第一に考えて作り上げた家をご覧ください。
林芙美子記念館
【所在地】〒161-0035 新宿区中井2-20-1 Tel 03-5996-9207
【開館時間】10:00~16:30(入館は16:00まで)
【休館日】月曜日(祝休日の場合は翌平日)、年末年始(12月29日~1月3日)
【入館料】一般150円、小中学生50円
【アクセス】都営地下鉄大江戸線・西武新宿線「中井駅」から徒歩7分 東京メトロ東西線「落合駅」から徒歩15分
【問合せ】新宿歴史博物館 学芸課 03‐3359‐2131